虱の記

高熱量低脂質。

Fantastic! Awesome! JAPAN!

近ごろ、日本再発見系の番組、多くないですか。

 

自分がテレビを見てきた歴史は(といっても最近は見なくなったが)30年にも満たないので、流行り廃りを俯瞰してみるには知識も経験も足りない。あくまで自分の感覚として、だけれども、10年前はクイズがやたら流行り、いまは日本再発見(あるいは外国人系)が流行っているという実感がある。

 

航空網が充実し、世界が狭くなり、日本からそして日本への渡航者が増えたことによって、「外国」が身近になったことが大きな要因だとは思う。でも、それ以上にまずい原因がある気がする。

 

こんな考えに思い当たったのは、外山滋比古翁や故森本哲郎金田一春彦が3〜40年前に書いた文章読んでいた時のことだ。そこで述べられていたのは、まぁ、ざっくりといえば日本人批判なわけだ。曰く、日本人は同質的集団的で自己決定ができない。意思表示が弱い。曰く、島国で外敵を意識して来なかったからか、競争意識が弱い。曰く、形ばかりの儒教観にしばられている……などなど。よくもまぁ、自国民にそこまで文句をつけられるものだと感心してしまうが、本心で書いていたのは半分くらいだろう。半分は当時の流行りに合わせたのだと思う。「外国」が意識しはじめられ、国際感覚を磨きたいと考える人があふれていた時代だろうから、著述家たちの海外エピソードは貴重だったのだ。

ようは、3〜40年前には自国を馬鹿にする、つまりは「海外に比べて日本のここはまずいんじゃないの?」という論調(最近もこんな番組あったな)が流行っていたんじゃないかと。あまり健全ではないかもしれないが、それが日本人の、ひいては日本の成長に役立った部分も多いにあるだろう。国際人は増えたし、旧態依然としたシステムが破壊されたりもしただろう。(ただし、個人的には「海外ではこれが常識なんだぞ」と得意げにのたまってくる連中はへどが出るくらい嫌いだ。ここは日本だし、海外ってどこだよ。)

 

そんな流行りに比べて、いまの流行りはどうだろう。ちょっと見苦しくないか。

日本製品の素晴らしさを訴える番組、日本への旅行者に密着して、喜ぶ外国人の様子を流す番組、里帰りする外国人に日本の家電等を持たせる番組、etc...etc...

これを見た視聴者はどこに面白さを感じるのかと考えると、それは満足や承認欲求を前提にしているとしか思えない。「ボクたちの国は凄いとこなんだなぁ!」と。でも実際にそうか? 僕は日本が好きだし外に出たこともないのだが、凄いところかどうかと言われれば、もはや外国から抜きん出ているとは思えない。変わっているのかもしれないが。経済も冷え切っているし、人口も減少する一方だ。

今の流行りは、やや強い言い方をすれば、"国威掲揚、自国礼賛"に他ならないと思うのだ。そして、そんな番組が流行るってことは、日本の輝きが鈍り、国威が落ちていることの証左でしかないと思う。流行りから見える、「日本終了のお知らせ」だ。

 

日本は自国を海外と相対化させることで成長してきた。猿真似とビゴーに馬鹿にされたもんだが、それでもやってのけた。"人のふり見て我がふり直せ"をやってのけた。でも、いつのまにかそのハングリー精神がどこかに行ってしまったらしい。傷の舐め合いはしたくないものだ。